◎風の便り花便り

6月26日
 うっとうしい梅雨空を見上げて気分も何となくめげてしまいそうですが、
ただいま、市内の方々の間でひとしきり話題になっていることがあるそうです。
府中市立美術館が高橋由一さんの絵画を約1億円で購入したという新聞記事が発端です。
「多くの人々が生活が苦しいと言っているご時世に、何も1億円も出して絵画を購入する
必要が果たしてあるのか」と言うのが異義を唱えている方々のご意見。
その方々は決っして美術館が絵を購入してはいけないと言うのではないのです。
美術館の存在も価値もきちんと認めているし、また時々は美術館に行く事もある。
けれど1億円という大金を注ぎ込む必要が、今のご時世にあるのか。
どれだけ多くの人々がその絵を見に行くのか。
必死で税金を払い、日々の生活を切り詰めているのに。
そして皆で市役所に電話をしようということになり電話をしたところ、なかなか繋がらない。
やっと繋がって得た市役所の回答は「税金で1億円をだしたのではありません。
平和島競艇からのお金です」との由。
府中市には多摩川競艇場というものがあり、そこから得たお金なので、まあーはっきり
言えば市民から文句を言われる筋合いはないというようなニュアンスだったとのこと。

「それでもなんか変よね。競艇場からのお金なら議会の承認もなく
何を購入してもいいのかしら? 」
そこから先に話しが進んでいかないのが庶民の、あるいは主婦達の力の限界?

この問題はとてもいろいろな要素を含んでいると私は思うのです。
絵を購入しようと決めた方々の生活の経済的レベルと一般の暮らしをしている方々の
経済的レベルの違い。
公の機関が出費をする時の最終判断は誰が何を基準にして出すのか。
それに対する監査はないのかなどなど、、、。
私は個人的には高橋由一さんの絵は好きです。けれど本当に市民の多くが現実にリストラ
や減給にあって苦しい暮らしをしている現実をみているだけに、怒りや疑問を呈する人々
の気持ちもとても良くわかるのです。

市役所の電話が繋がらない程に殺到した「理由」を市役所の方々には、
よくよく考えていただきたいなと思うのです。
市の職員さん方が毎月いただくお給料。
それが決して当たり前ではない人々もいることを知ってほしい。

6月19日
 梅雨に入り関東地方はジメジメ、むしむしと何とも過ごしにくい日々が
続いております。
ご近所の方が青や淡い薄紫のあじさいの花を届けて下さり、そんなうっとうしい気持ちも
和らいでホット一息。
さて先日、「サントリー天然水南アルプス」の2リットル入りペットボトルをいただき
ました。(我が家は時々、花や食品のおすそ分けをいただけるのです。嬉しい! )
私は両手の握力が病気の後遺症で幼児並みしかありません。
ですから普段ならとても2リットルのボトルは持てないのですが、その時には
すっと片手で持てました。
持ってから ? 持てたと不思議に思って片手の持ち方を見ましたら、ボトルの
中心あたりに親指と薬指にあたる場所がゆったりとへこんでいるデザインでは
ありませんか。
ウ〜ン サントリーさんありがとう!! 
このようなデザインを考えた企画室の方は、きっと身近に手の不自由な方がいらして
どうしたら持ちやすいのかな?とボトルのいろいろな場所をどこをへこまそうかと、
あれこれ試行錯誤して下さったのでしょうね。
高齢化社会、地球にやさしいなどと世間はキャッチフレーズはいろいろあれど、
自分で「あ〜この場所がちょうど持ちやすい」と納得いくまでがご苦労だったと
思うのです。
出来てしまえば何てことのないことでも、その結論に達するまでがきっと大変だった
ことでしょう。

そんな企業の姿勢が嬉しかった。
勿論、これからはサントリーさんの天然水を飲もうと思いましたよ。
これからは多くの人々が高齢化していく社会です。
温かい気持ちでみんなが考えて取組んでいただけたら、ささやかな幸せを感じられることでしょう。


6月6日
 府中市のケヤキ並木には何百年も前に植えられた一見、もう枯れたしまったかの
ように見える古木の一部から枝が伸び、緑色の葉が元気にそよいでいます。
青葉、若葉の季節になると植物の力の偉大さをしみじみと感じて「偉いね」と
思ってしまいます。

1974年の参議院選挙で市川房枝さんが278万票という大量得票を得て当選した時、
市川さんに投票した多くの人々は、ひとりひとりの小さな力も結集すればすごい力に
なることを実感したことでしょう。
わずか今から36年前のことです。
けれどこのわずか36年前はまだまだ女性の社会や、家庭での地位は今の若い人達には
想像を絶するほど低く辛いものだったのです。
ある家庭に男の子が産まれれば、その他の姉妹は例え男の子より優秀であっても
進学の機会は男の子優先。
例え優秀であっても女性は男性の補助的仕事に甘んじる。
そんな時代に草の根運動を起こし、女性の地位向上を目指している市川房枝さんを
再び国会へと応援したのが、6月5日に総理大臣に選ばれた若き日の菅直人さんでした。

市川さんと当選を喜ぶ菅直人さんの新聞記事を、未だに私は大切に保管しています。
それは明治、大正、昭和と時代を経ても封建的な環境に苦しむ巷の多くの女性にとって、
ひとりの力も大きくなることを、草の根運動家のなかに若き男性がいたことをずっと
語り続けていこうと思っているから、、、。
人は経験しないことでも、人から聞いたり本を読んだりして収得することができます。
ですから「まだ産まれていなかったから知らないもん」という考えを私は好きになれ
ないのです。

これから多難きわめる総理大臣のお仕事に多分マスコミは批判集中砲火を浴びせて
いくことでしょう。
枯れ木のように痩せていたご高齢の市川房枝さんが、若者よりもみずみずしい感性で、
叩かれても批判されても負けずにご活躍なさったことを菅総理どうか思い出して存分に
力を発揮して下さい。
36年前に投票用紙に「市川房枝」と書いた時の感動を278万人の人々はきっと今も
忘れてはいないでしょう。


5月22日
 柔らかい黄緑色の柿の若葉が風にそよいでいます。
 
  お早うと 声をかけるや 柿若葉  黒岩くにこ

美しい黄緑色のういういしい若葉に思わず「お早う!」と声をかけて、ランドセルを
背負って走っていく子供の姿が目に見えるような俳句ですね。
やっと緑色の美しい季節になりましたが、新聞の訃報欄に一瞬たまらない寂しさを
覚えました。

茅野 亮氏肺炎のため死去。享年75歳
すかいらーくの茅野氏とダイエーの元社長中内氏は一時代を築いた偉大なる
経営者だったと思っています。
一般に外食がまだ日本人の間でそんなに定着していない時代に、アメリカのホーム
ドラマに出てくるようなおしゃれな「すかいらーく」は昭和40年代から50年代に
青春時代を過ごした人々には、たまらなく懐かしい場所なのではないかしら?
庶民の外食といえばお蕎麦やさんとかデパートの食堂くらいの時代に、
木造のアメリカンハウス的な外観、ハンバーグやピラフという当時はまだ珍しい
メニュー。しかも価格はいわゆる洋食屋さんより安め。
フアミリーレストランの草分け「すかいらーく」は庶民の若者や家族連れに大人気と
なりました。
私も大好きでした。ピラフにサフランのめしべが入っているなんて、もうそれだけで
洋食を食べているという嬉しさ!。
やがて高級志向、そして不景気になって低価格帯へと時代の経済状況に対応しながら
社長の茅野さんは初期の目的と違う方向へと流れていく「すかいらーく」に、
きっと悩まれたのではと素人目にも憶測する状況が続いていたようです。

ひとつの企業を立ち上げ、それを大成功させてそして時代の変化に悩まれて。
でも茅野さんは同じ時代を生きている人々には憧れだったのではとも思うのです。
75歳、まだまだご活躍できるお歳でした。
こういうことを多分、ひとつの時代が終わったと表現されるのでしょう。
ひばりのマークの「すかいらーく」は戦後を生きた人々の安らぎと、そして頑張れば
茅野さんみたいに成れるかも知れないと言う憧れのマークだったのでは。
茅野さん、ささやかな庶民に外食の楽しみを与えて下さってありがとうございました。
                               合掌


5月9日
 
真夏日のような強烈な日射しに、早くも日傘や帽子の出番がやって来ました。
この頃の東京はうららかな春のほんわかとした柔らかい日射しが消えてしまったよう。
寒い冬からいきなり真夏日になり、四季の移り行く美しさを感じるゆとりはどこに
いったのでしょう?

50年ほど前、高校生だった私は先生方の「あだな」をつけるのが好きでした。
「ひねもすのたり」と命名した社会の先生がいらして、まさにぴったりだと
クラスメートも「ひねもすのたりがね、、、」などと話す始末。
その社会の先生はとてもおだやかな性格で話し方もゆったりと丁寧なお言葉。
生徒にもきちんと敬語をお使いになります。
ただあまりにも丁寧なお言葉でゆっくりと授業なさるので、春の暖かい教室では
うとうとと居眠りをする生徒が多発。
 春の海 ひねもすのたり のたりかな
まさに教室はそんな状態になっていました。

そう50年ほど前は春の暖かい居眠りをするような日々もあったのです。
今、強い日射しを浴びながら「あの社会の先生はどうしていらっしゃるのだろう?」と
思わず懐かしさがこみあげて来ます。
人生のわずかな時間を共有した学生時代の先生やクラスメートの事が、季節の移り
変わりにふと思い出す年齢になったのでしょう。

今頃は、青紫のアヤメや白い卯の花が咲いていた校庭の一隅も懐かしい。
そんな思い出を辿りながら、国分寺のお鷹の道あたりを散歩していると、
さやさやとモミジの若葉が揺れる道に、白い海芋の花に写メールを向けている中高年の
グループの人達が何組も行き交いました。
きっと色々な思い出を共有しているお仲間の方達なのでしょうね。


4月27日
 もうすぐ4月も終わりというのに、まだまだ寒いですね。
冬から春にかけてズ〜っと風邪ひき状態の私は、ぽかぽかとした陽気が待ち遠しい。
花粉症で目も痒いし鼻もツーゥと垂れてくるし、あ〜と出るのはため息ばかり。
そんな時はおいしいコーヒーの香りで一息いれたいのですが、何せこの不景気ですもの。
そうそう喫茶店にはいかれません。
たまに本当にたまにスターバックスに行くとほっとして、思わずニコニコと幼児の
ように微笑んでしまいます。

さてタリーズコーヒーってご存じですか?
この一冊の本に出会う迄は全く聞いたこともありませんでした。
そのお店すら見た事がなかったのですが。
新潮文庫「すべては一杯のコーヒーから」松田公太著

作者の松田さんは銀行を退職して自分がおいしいと確信が持てるタリーズコーヒーの
直売店をどうしても出したいと、あらゆる努力と工夫をして上場会社にまで立ち上げた
まだ若い男性です。
読み進むうちにその努力、情熱の熱さに「きっととても美味しいコーヒーに違いない」
と読者を思わせてしまう才能の持主なのです。
親からもらった資産とかニ代目ならともかく、全くの素人の若者が世界の名だたる
財界人に単独で話をつけに行くそのフアイトが唖然とするほどすごい。
失敗と裏切りにもあいながらも、松田さんはとにもかくにも前へ前へと突き進んで行く。
もうこれではそんなに松田さんをとりこにしたタリーズコ−ヒーとはいかなる味と香りか
是非とも味わってみなくてはなるまい。
私はタリーズコ−ヒーのお店をただ今物色中。
本当に暖かくなって元気になったら是非飲みに行こう!

つつじの花が開き始め、ハナミズキもほころんできました。
きっともうすぐそんな暖かい日が来るでしょう。


4月12日
 冷たい小雨が降り、満開を過ぎた桜の花びらが道路を淡いピンク色に染めています。
近くに川でもあれば花筏も楽しめるけれどと車量の多い道路際にある弊社の不粋さが
ちょっと寂しい思い。

 こんな句をご存じですか?
 散るさくら 残るさくらも 散るさくら
ずっと以前に知人から教えられて「フ〜ンなるほどね。含蓄ある句ね」と
いたく心に残っていました。
そしてやっとこの句の作者が判ったのです。
良寛和尚さまの辞世の句でした。
散る桜も愛しい。そしてまだ枝で咲いている桜もいずれは散っていく桜。
どんな桜の花も花の寿命を全うして、美しさの余韻を人の心に残していくのね。
今年も大好きな桜の花を見る事ができて、そして桜の樹の下に立って
「お〜なんて素敵!」と両手を挙げてくるくると廻る私だけの喜びの舞いをして
十分に堪能しました。
名所の桜ではないけれど市内にはたくさんの桜の樹があるので、もうそれで十分。
特にお勧めは国分寺街道の国分寺駅近くの「不動橋」の両側です。
地面すれすれまで大きな枝がしなやかに垂れ下がり、満開の桜の花のほのかな香りまで
満喫できました。
もしご存じない方は是非とも来春を期待して行って見て下さいね。

桜の並木がある周辺の方々はこれからは毛虫がついたり、落葉のために雨樋のお掃除と
何かと大変だそうです。
そういう桜並木のご近所の方々にも「ありがとう」ってお礼を申し上げます。


4月3日
 
今年の桜はなんだかとても可哀想。
満開になっても強風に吹きさらされ、雨や曇り空でせっかくの花も見劣りがち。
天候の不順によって桜の美しい姿を見せられずにがっかりしているのではないかしら?
一年間耐えてきたのにねと、同情して曇り空の桜を眺めております。
こういう年もあるのね。桜さん!

そう人生もしかり。
やることなすこと全てマイナス方向にしか進まない時期もある。
あ〜私の人生どうなっているのと絶望するときもある。
春は特に得意絶好調の人と絶望の人に分かれる季節かもしれませんね。
でも言うではありませんか!
「盛者必衰の理」「禍福はあざなえる縄のごとし」などなど。
受験に失敗した方も就職できない方も、あなたひとりだけではないのだ!

弊社の不動産業も、また建築業の方もルームクリーニング業の方までが、
「今年は一体どうなっているのだろう?」とお客様の無さに嘆いています。
空室ばかりのアパートをかかえている家主さんも深刻な状況です。
ごく一部の人々を除いてはみんな苦しい。みんな大変。
そう思ってせめて気持ちだけでも明るく持って切り抜けましょう。


3月20日
 
吹く風はまだ春は名のみの冷たさですが、少しずつ日射しは春。
国分寺街道の府中一中近くのこぶし並木にも、白いこぶしの花がちらほらと
咲き始めています。
同じ条件の道路の両脇に並んだこぶしですが、木々の枝先に白い花を
たくさんつけた木もあれば、まだ羽毛におおわれたような蕾みの木もあって、
木の成長にも個性を感じています。

さて、読書好きの方で特に探偵ものがお好きな方なら「浅見光彦シリーズ」に
どっぷりと浸っていらっしゃる方も多いでしょうね。
シャーロキアンならぬ「浅見光彦クラブ」なんて愛好家のグループまであるのですから
なかなかの人気らしい。
作家は内田康夫さんですが、作家自ら「軽井沢のセンセイ」なんて名前で登場する
ユーモアもおありです。
さて主人公の浅見光彦さんは、東大首席卒業し警察庁刑事局長のお兄様がいるという
設定。同じ親から生まれたのに光彦さんは三流大学をやっと卒業し、コネで入った
会社も長続きせずに、もっぱらフリーライターで何とか暮らしているという、
これまた対照的な設定。
けれどひとたび事件が起きると光彦さんの感ががぜんと冴えてくる。
そして時にお兄様の警察庁刑事局長という、いわば水戸黄門様の印篭のごとき
力をそっとお借りして解決に全力を注ぐというのが大体の筋立て。
この兄弟、共にお互いの素質を尊重し寄り掛からずも、時に力になるという
理想的な関係を維持しているのが、愛読者にはたまらない魅力のひとつです。

同じ親から生まれても子供はみんなひとりひとり違う個性をもつ。
一見、見劣りする子供でもどこかにその子の良さがあるかもしれない。
そんな救いを読者に与えてくれる。
「文系しか出来ない、生きるのが下手な子」と言われ続けて生涯劣等感を負っている
私にはもうたまらない救いの「光彦様」なのです!
まだお読みになられていない方で、「私ってダメなの」なんて劣等感をお持ちの方は
是非お読みになって下さいね。
「感」も冴えない?そう嘆かないで。きっと何か冴えるものがあるかもしれないでしょう。


3月6日
 まだまだ気候は穏やかとは言えない日が続いています。
三寒四温とはよく言ったもので、雨降りの日はひときわ寒さがこたえ、
「春よ来い 早く来い」とつい歌いたくなってきます。
そんな時は熱いお茶におせんべいと、ちょっと婆くさいひとときも楽しいもの。
さて「亀田の柿の種」ってご存じの方が多いと思いますが、小袋の裏側の
「けなげ組」というところをお読みになっていますか?
ここの文章がなかなか良いのです。
ちなみに会員番号27の話題は「スイカの種」
 私たちがいないと新しい生命だって生まれないのに、数が多くて散らばってると
 いうだけでめんどうがられてる、、、でもスイカの絵を描く時、私たちがいないと
 サマにならないでしょ、、、!

スイカのつぶやきを聞くとスイカの種って、けなげだったのね。
まあーこんな具合の文章がいろいろと「けなげ組」には掲載されているのです。
どう? たしかに あら〜そうよね と思うでしょう!
世の中にはあると煩わしがられたり、気にもしてもらえないけれど、本当は
とても大切な物ってあるのね。
そんな事を「けなげ組」の文章はひとりごとを言うような感じで、教えてくれるのです。

この小袋の裏側を発見した時は「う〜ん やるじゃない!」と嬉しくなりました。
そしてこの裏側の発案者? にはなんだかお友達になりたいくらいに親しみを
感じました。
こんな小さな発見も日々の暮らしをほっとさせてくれるもので、私はとっても
お気に入りです。
「亀田の柿の種」を召し上がる時は袋の裏側も是非読んでみて下さいね。
宣伝を頼まれたわけではなくて、純粋に裏側の愛好者として「お願い!」
5〜6年前に植えたヒヤシンスが蕾みを出し始めました。
良い香りが楽しみです。


2月27日
 関東地方に春一番の強い風が吹いて、日毎に暖かくなって来ました。
新年を迎えたと思ったら、もう卒業や転勤の季節です。
就職の内定していない学生さんや昨年からの就職未定者の方々には、
春一番の風も冷たく感じられることでしょう。

昔は良かったと言う気はないけれど、学校を卒業すれば、そしてより好みさえしなければ、
どこかに就職できたひと昔、ふた昔の方が若い方には良かったのではないかしら?
「こんな世の中に誰がした!」若い彼等の気持ちを思うと今を生きている若者が
気の毒にさえなってきます。
生産業が日本の国の主幹産業から縮小していく過程で、若者の就職先が少なくなって
いき、せっかくのお家芸とも言われた日本人の器用さや研究心が失われていくことも
寂しい限り。

そんな時代に、地方の特色を生かした焼酎造りや、もう一度農業にチャレンジする
若者達の姿がドキュメント番組で放送されています。
けれど思うのです。
愛媛県の急斜面に這いつくばってミカンを育てても、それだけでは暮らしていけない
農業の実態。
規格化されたサイズにわずかにはずれただだけで、1キロ5円にもならない農協の
取引価格とは一体なんなのかしら?
そしてただただ安さを強調する大手企業の販売戦略。
悲しいでしょう。
人が一生懸命に作った物を第三者が勝手に安く売っていくシステム。

不動産業でも、いくら業界が指導してもお客様に重要事項の説明も無しに、ともかく
取りあえず内金を入れる事を要求する業者が後をたたないそうです。
人として真っ当な仕事をして、それが正しく評価されるそんな社会であってほしいのに。
春風が人の心も温かくしてくれる世の中になって!


2月6日
 立春を過ぎてから、東京地方は冷たい大気におおわれて、道行く人とすれ違いざまに
「寒いですねえ」と挨拶を交わす日々です。
けれど季節はちゃんと移行しているのね。
あちらこちらの庭や公園では椿の花が美しく咲き始め、思わず足を止めて見とれています。
椿は花が盛りを過ぎると、ポトンと落ちるので昔から縁起が悪いと言われてきました。
「そんなの椿に気の毒。人間が勝手に連想して嫌がるなんて。」ね。
椿ってひとつひとつの花が何か物言いたげな表情に感じて、不思議だなあと
思っていましたら、こんな短歌を見つけました。

 ふりかえる秋篠寺のやぶかげの椿の花はみなもの言へり  小野興二郎

 お〜私と同じように感じる方もいらっしゃるのね。何だかもうそれだけで嬉しい!
毎日の暮らしのなかで時に心がささくれるような気分になったり、
もうどうなってもいいと開き直ってみたりと、人の心は穏やかな毎日とは言いがたい
時もあるけれど、ほんのちょっとしたささやかな事で、また癒されたりもする。
今日は私と同じ感じを抱いて下さっていた作者に出会えたことを「嬉しい事の発見」
として、仕事に頑張るかな。

不動産業をしていると、時に全く見ず知らずの方からお電話があります。
名前を名乗られないので、どこのどなたかわからなのですが、きっとどうしようもない
胸のうちを聞いてほしいのでしょう。
ご年配の方が多く、始めはお部屋を探してとおっしゃる。
けれど本題はどうも同居している子供家族との不和や、老齢の夫ともう一緒に
いたくない等、涙声でえんえんと語られる。
「そう、それは大変ね。」などとじっくりとお聞きしていると、
最後に「でもしようがないわね」とご自身で結論を出されて「聞いてくれてありがとう」。
人には身内や知り合いにも言えない事をひとり胸に抱えて生きている方がいらっしゃる。
どうぞお電話かけて下さい、一緒にお話しましょうね。
椿の花だって何か物言いたげ、ましてや人間もや ね!


1月30日
 
小春日和の暖かい日が続いている東京です。
ここかしこのお庭では水仙の白い花が清らかな香りを放ち、あ〜とっても
幸せな気持ち。
でもね、ここ数カ月「何だか利用者のことちっとも考えていない措置よね」と
近隣の方々が話す、あまり幸せ気分とは言えない銀行事情があります。

ここ府中市栄町はJR国分寺駅と京王線の府中駅の中間地点。
唯一あった、りそな銀行支店が撤退して、キャッシュコーナーのみが2台置かれました。
通帳やカードの利用にはまあー不自由しないのですが、、通帳の記載がいっぱいに
なると、東府中支店にいかないと、次の通帳がいただけない。
この東府中支店に行くには、バスで京王線の府中駅に行き、そこから東府中まで
電車で1駅乗らなければならない。
元気な人は自転車で行けば良いけれど、片道十数分はかかる。
とても高齢者には無理。
このりそな銀行は元はあさひ銀行を名乗り、その前は協和銀行と名乗っていました。
いわゆる銀行業界の経費節減やなにやらで統廃合を繰り返して現在に至っているので
しょう。
そして、またまた不自由が加算されました。
自動機の1台が撤去されたのです。
いわゆる民間の給料日の25日や月末は利用者で行列ができます。

けれど多分、銀行側にとっては採算の合わないところは、どんどん経費削減を
しているのでしょう。
「寒いのに困るわよね」
「全く嫌な世の中になったわよね。お得意さん以外はもうどうでもいいのかしらね」
などなど皆さん、知らない同士が待ちながら小声で話しています。

高齢者社会に暖かい手をと聞こえの良い言葉が、まことしやかに巷にはあふれて
いるけれど、世間の実態は効率の悪いことにはサッサッと手を引く。
何も、りそな銀行だけを非難しているのではありませんが、経済界の冷たい部分を
見た思いがするのですが、、、。
梅の花が咲き、ろうばいの黄色い花が咲き自然は優しいのにね。

1月23日

 寒木瓜の ほとりにつもる 月日かな  加藤楸邨

 一月も下旬になり、新年の初々しい気持ちからいつもの慣れた生活へと
元に戻っていく頃になると、上記の俳句を思い出すことがあります。
真冬にちらほらと咲く寒木瓜の赤みがかった橙色の花は、過ぎし日の幾星霜を
思い出して、それでもきちんと生きていかないとねと反省させてくれるのです。

さて、1月21日の読売新聞の漫画「こぼちゃん」のヒトコマに「夫婦別姓」が
取り上げられていました。
漫画のヒトコマに「夫婦別姓」が取り上げられるなんて、まさに時代の変化!と
驚きいっぱいです。
「夫婦別姓」と言う言葉を初めて耳にしたのは今から約40数年前のこと。
大学の一年上の先輩が「夫婦別姓」をテーマに卒論を書き、その卒論が素晴らしい
出来映えと大変な評判でした。
ところが当時はまだまだ「姓」は家制度の名残りで固執する人々が多く、以来「別姓」を
支持する人々は「女にあらず」と言わんばかりの非難をうけておりました。
卒論を仕上げた先輩も検事におなりになり、やがて弁護士になられましたが、
ご自身は夫の姓を名乗っていらっしゃいましたから、現実にはあの優秀な女性でも
難しかったのかな?と思っていました。

以後なかなかこの問題はまともに議論されず、民主党政権になり千葉景子さんが
法務大臣に就任されて前向きになったと思われます。
何もあえて「別姓」のみにこだわるのでは無くて、夫の姓になれば夫の「家」の
人間としてのしがらみに拘束されるのが苦痛だという日本の歴史に躊躇する女性が
多いのではないのでしょうか?
議論する事とその内容があたかもその人攻撃になりやすい、言わばディベートの
経験のあまりない国では、「別姓」を語ることも躊躇われた時代から少しづつでも
変化していくことは嬉しいなと微笑んでおります。


1月16日
 北陸や東北地方、そして九州までが豪雪に見舞われている今年の冬。
さぞや暮らしにご不自由のこととお察し申し上げます。
金子みすずさんの詩にこんな詩があります。

       雪
 上の雪寒かろな  冷たい月がさしている
 下の雪重かろな  何百人ものせている
 中の雪さみしかろな 空も地面も見えないで

私は「中の雪さみしかろな」と歌ったみすずさんの優しい心が愛おしく
思います。
見えない所への思いやりが感じられて。

先日、テレビで堀江貴文さんが中小零細への返済猶予政策に関して
「潰れそうな会社はどう援助してもいずれ潰れるのだから、そこに国の
 お金を投資するのは捨て金」というような事をおっしゃっていました。
なるほど、堀江さんのように巨額のお金をまわせる頭の良い方にとっては、
どうせダメなものは切り捨てる事の方が国の経済にとっては正しい政策だと
判断するのでしょう。

けれど日本には零細企業が必死になって支えている業種もあれば、何とか雇用を
守っている会社もあります。
その経済力は何百社集まっても大企業には及ばずとも、採算性には劣っても
それでも技術や人を守っている会社がある事は事実です。
愚直な生き方を頭の悪い経営者と言ってしまえばそれまでです。
「志し」や「思いやり」、そして「生き甲斐」などでは経済社会では太刀打ちできない
事も解っています。
しかし、そういう生き方が日本の技術や底辺の人々を守っていることも事実なのでは。

関東地方ではぬけるような青い空に、北風の中でも桜やこぶしの冬芽が少しずつ大きく
なってきました。
冬芽に愛おしさを感じて、春までがんばれ ! 。


2010年 元旦
 新年おめでとうございます。
約十年前にわずか一鉢50円で購入した鉢植えの万両と千両が、今年も小さな実を
つけてくれました。
まさに万両にも千両にも値する嬉しさです。
共に日々を生きてくれてありがとうという気持ち。
新年を向かえてもあまり「おめでとう」なんて言えない方も、また
「おめでとうっ!」って飛び跳ねたいくらい嬉しい方もいるでしょう。
世の中さまざまですものね。
でもまあー、一応新年ですから「おめでとう」とご挨拶をして、一年の幕開けを
してみましょう。
昨年の本欄は不景気の事ばかりを書いてきました。
もう止そうと思っても、どうしても書かずにはいられない、
自他共にそんな状況の去年でした。

主婦の立ち話も、お家賃を届けに来る学生さんも、そして40~60代の世帯主の方達
までもが、「この先、日本の経済はどうなるんだろうね」と挨拶代りにするのが
この言葉。
毎日聞いていると、本当にこの先どうなるのだろうと思ってしまう。
「溜まるのは公共料金と税金の督促状ばかり」と、しまいには笑い出してしまうのが
日本の庶民の日常のヒトコマ。なんともわびしい。
そして、「どうせなら明るい貧乏人を目指そう!」と話が落ち着く。
そんな一年が過ぎ、それでも諦めずに今年はもっと頑張ろうという話しになる庶民の
けなげさよ!

今年もこのホームページの原点に立ち返り、「不動産業はいかがわしい、やくざな
仕事では無くて、ごく普通の人が営んでいる仕事なのよ」というメッセージを
お届けさせていただきます。
みなさまにとって本年が幸せな年になりますように、心をこめてお祈り申し上げます。

塩津不動産(株)
メール宛先:siotufud@cd.mbn.or.jp
Tel:042-366-4599 Fax:042-366-4656
東京都府中市栄町3-26-12

1998.3.25 公開


製作:塩津 暁彦
塩津暁彦メール宛先:akkiepon@aa.mbn.or.jp