◎風の便り花便り

12月26日
万両や、やぶこうじの赤い実が冬の景色に彩りを添えて師走。
慌ただしい時期になりました。
今年も当HPをご覧下さいましてありがとうございました。
またこの「風のたより花だより」の欄に目を止めていただき、
ご感想をお寄せくださった方々にも心からお礼を申し上げます。
当HPを立ち上げる時に、ひとつの願いがありました。
それは一般の方々が不動産業界に抱いているある種の不信感や偏見を少しでも取り除いていただけたら。
安心して店のドアーを開けていただけたらという事。
日本ではまだ不動産業界は「ろくな者ではない人間が、人の財産でぼろ儲けをしている」と思われているふしがあります。現実にそう言われた事もありました。
けれどおよそこの経済界で取り引きされる物の中で、
もっとも高額で信用を要する取引のひとつに不動産業があると思うのです。
「街の不動産屋」は決してうさん臭い人間がやっているのではなく、
ごくごく普通の人間が営んでいることを知ってほしかった、、、。
そこで日々、感じている事をつれづれなるままに兼好法師様のようにとはいかなくても、
そこはかとなく書き綴ってまいりました。
「ずっと読んでいました。アットホームな会社なんですね。安心しました。」と、
ご購入の動機を語って下さったお客様がいらした時には嬉しかったです。
これからも社会の中でささやかに暮らしている普通の人間の嬉しい事や
疑問に感じた事等を書いていこうと思っております。
お目を通していただければとっても嬉しい!
今年一番、心動かされたのは北朝鮮の拉致被害者の方々を救う、拉致議連の人々の行動です。
横田様ご夫妻や蓮池様のお兄様達、拉致議連の皆様の冷静な対応を拝見していると、
人間とはかくも強く、聡明に生きられるのだと深く感動させられました。
察して余りある苦悩を秘めて、毅然と向かっていかれる行動力には頭が下がる思いです。
一日も早い解決を願い、どうか被害者の皆様が生きて帰ってくる事を祈るばかりです。
生きていくと言う事は多くの人々に教えられ、導かれていくことなのだと感じている年の暮れです。
皆様のお幸せを心からお祈り申し上げます。


12月15日
京王線府中駅近くにある大国魂神社の入り口のケヤキの大木に、
この頃夜になるとイルミネーションが輝いています。
寒く暗い冬空にすくっと枝先をのばした裸の大木は、とっても寒そう。
それがきらきらと電飾の衣装をまとったら、そこの一帯がロマンチックな場所に見えてきたのです。
地球資源の観点から考えるとエネルギーの節約は、重要な事は重々にわかってはいるのですが、
冬空の電飾は心の灯りまで与えてくれるようで、つい立ち止まって眺めてしまいます。
街は忘年会シーズンの真っ盛り。
市内のあちこちに酔客がはしゃいでいます。
 ♪あれから僕達はなにかを信じてこれたかな♪
その人達を見ていたら数年前に流れたスマップの「夜空のムコウ」の歌詞が頭をよぎりました。
 ♪あの頃の未来に僕らは立っているのかな♪
みんな若い時は人生はとてつもなく長いと思っているけれど、
でもその人生を長くやっていると若い頃に描いた「あの頃の未来」には
多くの人が立ってはいないのが現実みたいだと悟ってしまう、、、。
若い人達の群れも、ちょっとくたびれかけた人達の群れもお酒がいっぱい入っているからか、とてもご機嫌。
バスやタクシーを待っている間もお互いに肩をたたきあったり、歌ったりと楽しそう。
忘年会なんてネーミング、誰が名付けたのでしょうね。
今年の嫌なことを忘れて、来年の楽しいことを考えると解釈すれば素敵!
夜の暗闇に八つ手の白い花がぼんやりと浮かびあがっている頃です。

12月8日
日毎に冬の寒さがつのり、あちらこちら公園の山茶花がやわらかい花びらをそっと開いています。
   散るために山茶花は咲きつぎにけり  紫水

山茶花の花は、色も形もやさしく、そして散り際も音も無くはらりと落ちて、
何ともゆかしい花だと思い、私の好きな花のひとつです。
ふた昔か三昔ならば府中でも、落ち葉焚きの煙りがたなびき、
あらかた燃えた落ち葉の中から焼き芋のほどよい香りがしてきたものですが、
昨今は落ち葉焚きも目にしなくなりました。
自然の移ろいと共に暮らしてきた時代を懐かしみながらも、
エアコンの効いた部屋で仕事をする自分の身勝手さにうしろめたい気持ちになります。
と言いますのもここ連日、各地の海で座礁した船から流れ出る重油の被害に、
漁業関係者の方々は死活問題と報道されているからです。
考えてみると私達の生活は重油に依存している部分がかなりあるのですね。
暖をとったり、車を動かす油も一歩間違えば多大な被害をもたらす事等など日頃は自覚さえもしないで。
けれど重油に汚染された海のテレビ画面を見ると、その恐さは計り知れず、
この不況に加えて漁もできないとなると深刻です。
便利にその利益を享受しているときは有り難みを忘れがちですが、
ひとたび事故が起きれば、何ごとも無い事がどんなに大切な事だったかとしみじみ感じます。
数年先か数十年先になるのか、海が回復するメドはたたないとか。
政治の力で漁業保証など早く支援の手を差し伸べてほしいと願っています。
すっかり葉を落としたカリンの木の枝先に楕円形の実がぽつぽつと残っている冬空です。


12月1日
雨模様の晩秋、街路樹のけやき並木の葉が落ちて地面にへばりついています。
ほうきで掃いてもなかなか剥がれてくれません。
世間で定年後に妻の後ろをうろついて困る夫を「ぬれ落ち葉」と言うのは、
なるほど上手い表現だと感心しながら、落ち葉掃きをしています。
さて先日、所用があって久しぶりにJRの吉祥寺駅を降りました。
今から30数年ほど前の吉祥寺は三多摩地方の駅ではモダンで美しい街でした。
通学の帰りにちょっと立ち寄るダイヤ街のあんみつ屋さんとか、
高価そうな明治や大正時代の重々しい古本を並べた古本屋さん。クラッシックレコードを静かに流していた喫茶店。
大人の落ち着いた雰囲気のある画廊などもあり、知的好奇心を満たしてくれる若い人にはワクワクする街でした。
それがあまりの変貌ぶり。
何よりも音がうるさいのです。街の色が派手で何やら品が無い感じ。
そして何とも形容しがたい、どうみても服装や雰囲気がだらしなく見える若者の群れ。
決して今時の若者が嫌いなわけでは無いのですが、あの作家の丹羽文雄さんがご自分の
作品に登場させていた上品で文化的な香りのする街、「吉祥寺」が見当たらないのです。
時代が変われば街も人も変わっていくでしょう。
けれどその街が持っていた独特の文化的な雰囲気の香りが消えてしまうのは、何とも寂しい気がします。
どの駅を降りても同じようにコンビニがあり、貸し金融の看板が派手に目をひくのなら
そこは魅力的な街とは言えないと思うのですが、、、。
駅前の土地も建物も人様の物。他人がとやかく言う筋合いではないことは百も承知ながら
それでも私の心にある「憧れの文化的な街、吉祥寺」が失くなってしまったことに、心寂しい思いでした。
万両の実がほんのりと赤く色づいてきた12月初めです。

11月24日
イラクの核査察問題や北朝鮮の動きが世界の人々の注目を集めている一方で、
少数民族の人々の自治独立の動き等、ニュース番組は恐ろしい程の世界情勢を連日流しています。
そんな晩秋の日に団体旅行で鹿児島の知覧に行って来ました。
私は日本人なら必ず行ってほしいと思っている場所があります。
戦後も占領され続けた沖縄、原爆投下の広島長崎 そして特攻基地の知覧。
先の戦争で日本中が犠牲になった中でも、特に多くの人々が苦しみ続けた場所です。
少しでも戦争の事や戦後の苦労を知っている世代ならば、戦争を知らない世代の人々に
その苦しみや悲しみを語り継ぎ、戦争がおこらないようにすることが、
亡くなった犠牲者の方々へのせめてもの償いだと思うからです。
若く優秀な若者が帰りつく事のない飛行機に乗って飛び出した知覧の基地は、
子を持つ親ならば誰でも胸がはりさけそうな思いの場所でしょう。
特攻平和会館の入り口近くに石碑が建っていました。
そこに歌が刻まれています。
帰るなき 機をあやつりて 征きしはや
    開聞よ母よ さらばさらばと

高齢のご婦人がその歌を読み嗚咽していました。
もしかしたら身内に特攻隊で亡くなった方がいらしたのでしょうか、それとも夫が戦死した方なのでしょうか、、、。
戦後50数年が経ても人々の心にはまだ戦後は続いていると思い知らされました。
戦争の辛さや苦しみは語り継いでも語り尽くせない程にあるでしょう。
でももうそれを語り継ぐ世代の人は年々少なくなってきています。
どうか若者に語り継いでほしいと思っています。
石碑の近くの観音堂には色とりどりの献花用の小菊の花とお線香が売られていました。
たくさんの花が献花され、お線香の香りが漂っています。
こんなに多くの人が献花していかれたのだとほっとした気持ちになり、
明るい紫の小菊を手向けそっと手を合わせて来ました。
知覧の土地にはあちらこちらに、つわぶきの黄色の花が咲いていて穏やかな秋でした。

11月17日
 ♪ 秋の夕陽に照る山紅葉 ♪
誰もが知っている童謡のもみじの歌がふと浮かんでくる季節になりました。
私は人生ン十年も生きているのに、ほんの数カ月前まで、あの赤や黄色に染まる、
ギザギザの可愛い葉っぱの木をもみじというのだとずーっと思っていました。

ところが小学館の「週間四季花めぐり」を読んでいましたら、
それは大きな間違いだったと知らされたのです。
「もみじ」とは紅葉や黄葉する草木の総称で、中でも楓が見事に紅葉するところから
「もみじ」は楓の異称として用いられるとか。
イロハモミジやハウチハカエデなどイロハモミジ系のものを「もみじ」といい
それ以外のイタヤカエデなどを「かえで」として区別しているとか。
まさにへえーっと驚きです。
勝手に解釈してそうだと思い込んでいたことが、全く違うと知った時の感激と驚き。
こういう事を「目からうろこが落ちる」というのでしょうか・・・。
良く使う言葉に「名も無い花が咲いている」と言いますが、世の中に名も無い花なんて無い。
もしあったらそれは大発見だと何かの本で読んだことがあります。
その時にも「なるほど!」といたく感激したものです。
凡人はいくら長く生きていても、本当に知らない事の多いことよ。
まだまだ人生は面白いぞ。死んでなるものかと妙に元気づけられてしまいました。
仕事ならすぐに疲れたり飽きたりするのに、好きな事は特別なようでついつい秋の夜長を
もっぱら植物の本を眺めては、へえーっとかふうーんとか独り言を言っては感動しています。

 ちはやぶる 神代も聞かず立田川 からくれないに みずくぐるとは

高校生の頃に古文で習った歌が懐かしく思い出されます。


11月10日
昨晩の木枯らしが止んで、東京は久方ぶりに穏やかな秋日和。
JR国分寺駅を降りると、ぞろぞろと人の波が東京経済大学の方へと続きます。
いつもは大学受験の高校生の模擬試験を受ける若者の人の波なのに、
今日はどうみても中高年の人達の方が圧倒的に多い。
その人の波の中に入って受験して来ました。
「緑・花文化の知識認定試験」を。
数年前からこんな試験があることは知っていたのですが、試験日は日曜日。
不動産業は日曜日が忙しいことが多いので、仕事を休んでまで受けようとは思わなかったのです。
受けても特別に何か仕事上の役に立つわけでも無いので気が引けて、、、。
この試験は本当に植物が好きな人が全く趣味を楽しむための試験みたいで、
いわゆる世間で言うところの資格試験とは違うのです。
でも、この全くキャリアアップにもならないし、就職に有利なわけでもない試験に
こんなに多くの人がチャレンジするなんて、正直言って驚きました。
世間には花や木々の好きな人が大勢いるんですね。
植物好きな私はもうそれだけで嬉しくてワクワクしながら試験を楽しんできました。
出来栄は?
まあー聞かないで下さい。ただ好きなだけですから。
でも思いました。
貴重な日曜日を快く送りだしてくれた職場のスタッフや家族に感謝しなければと。
仕事上のトラブルを抱えていたら趣味で試験なんて受けている場合ではないし、
ましてや寝たきりの体の不自由な家族がいればたとえ数時間でも外出はできない。
自分一人の趣味のために外出できる事は、本当に恵まれているのだと、有り難く思いました。
通りの家々の庭には小菊が可憐に咲き、ハナミズキの葉が赤く輝いて美しい晩秋です。


11月3日
 良い秋や 犬ころ草も ころころと   
             一茶
こんな俳句が思い出されるような晴れ渡った晩秋の空は真っ青。
排気ガスの充満する東八道路沿いの空でさえ、こんなに青く見えるのですから
山々や里ではどんなに空も美しく空気もおいしいことでしょうね。

東京からディーゼル車を閉め出そうと言う石原都知事の提案に、
各種団体の反応はさまざまなようです。
ディーゼル車を使うことで成り立っている業界の方々にしてみたら、とんでもないと反発もおきていますが、
道路際に住んでみると本当に排気ガスの汚れのひどさに恐くなるのですよ。
毎朝まずする事は、ガラス磨きに物干竿を拭くこと。
真っ黒なすすが白いタオルにつきます。
レースのカーテンは一週間で洗っても洗濯機の水は灰色になります。
渋滞の時間帯は排気ガス独特の臭いでドアーを開けるのもためらいがちになります。
こんな空気を毎日吸っているのですから、多分私の肺はもうかなり黒いだろうと思います。
商売上、道路際が条件で住んでいるのですから被害は覚悟はしていました。
けれど実際は想像以上です。
世の中に今、存在しているものは多分どれもみんな必要だから生み出され、使われているのでしょう。
けれど、それが害を少なかれ発生しているのなら、それに代わるもので害の少ないものを
考えて造り出し、経費がかなりかかるのならば、そこに公金を費やした方が長い目で見て得策だと思うのです。
それが大きく言うのなら地球環境を守ることにつながるのですから、、、。
経済問題で竹中大臣は連日、テレビの取材攻め。与野党も批判や同調などさまざまですが、
経済も地球環境も、今は損失や負担に見えても後の世に感謝されるような対策に英知を振り絞ってほしいと願いたい。
一年中、鼻炎状態になりボーッとした頭で、政治家の特に族議員と言われている方々に
「あなた方はどうか百年の計を目指して下さいね」とお願いしたいのです。


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1998.3.25 公開


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